たまには実用的なことでも書いてみよう。昨年TJNY内でビッグニュースが駆け抜け、それはプライバシーに関することなのでここには書かないが、とにかくPairsというマッチングアプリが熱病的に流行した。出会いは二の次でおもしろい。もしドメスティックなマーケットリサーチが仕事に必要な人がいたら、いまもっとも信頼性高く実社会を投影している観察ツールはPairsだと断言したい。

すごく簡単に説明すると、Pairsにはかつて隆盛を誇っていた時期のmixiコミュニティが、より生々しいディテールをともなって、よりシビアに再現されているのだ。しかもほとんどのパラメータが男女別に表示されるのだった。とりあえずアプリをダウンロードして登録し、まずはrad wimpsでも米津玄師でも誰でもいいのでコミュニティ検索をして、規模感を把握してみてほしい。

そののち好きなミュージシャンのコミュニティを検索してほしい。ここで具体的なサンプルは提示しないけど、その数の残酷さ、男女比のリアルさ、そして参加者のサムネイルをめくってると立ち上ってくるセグメントの嗜好性に、たぶん震えることと思う。なにしろ参加のモチベーションが切実なので、繰り返しになるけど、いまネットでこんなに生々しい観察対象はめったにないと思う。また同業他社は数あれど、母数の大きさでPairsが圧倒的なように思う。

mixiがそうだったようにコミュニティはアーティストだけが対象ではない。マンガ、映画、小説、食品、レストラン、街、スポット、あらゆるものにコミュニティが作られていて、そしてあらゆるコミュニティから放出されている表情が、なんだかネット初期を回想してしまうほど、リアルで熱を孕んでいるのだった。いやほんま、騙されたと思って見てみてください。くそおもしろいうえに、単身者なら出会いが付いてくる可能性まであるのだし。

ひとつ難点を言うと、コミュニティ参加者として表示される異性の数と、実際に表示されるサムネイルの数にはズレがあったように記憶している。具体的にはTJNYのほかのみんなには表示されている女性が、自分にだけは見えてないことが何度もあった。つまり想像だが、年齢によって自分が表示される対象をフィルタリングできるのではないだろうか。なので年齢詐称しなかったおっさんは悲しみを抱いて眠ることになる。

そんなこんなでソファでどハマりしていたところ、後頭部に妻のしなやかな蹴りが入り、「違うの、出会いとかじゃなくて、純粋に、数字が、面白くて」ふたたび蹴りが入り、その場で私はアプリを削除することで家庭の平穏を取り戻すことに成功した。さまざまな誤解を呼びかねないところがもうひとつの難点といってもいいかもしれないが、あとこんなの世間では超いまさらなことなのかもしれないけど確かめる術がない。自分は実用的なことを書くのは向いてないねー。おしまい。

ちょっとだけ坂を入れてみたのだが、やっぱり死んだ。明らかに筋力より心肺が貧弱。30分4.9km。