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もうひと月近く前、ブルックリンで3日間のジャズフェスがあって、おれは最終日だけ行ったんだけど着いたら当日券がソールドアウトしてたのね。マジかよーって思ってるあいだにも当日券目当ての人がどんどんチケットスタンドにやってきて、ジーザス信じられないジャズフェスがソールドアウトするなんて!と嘆き散らしてる人とか、友達にチケット余ってないか電話してる人とかで入口がごった返してきたのだった。
おれも諦めかけて帰るところだったんだけど、ポスターをよくよく見ると、1日券25ドルのところにソールドアウトって貼られていて、3日通し券65ドルのところにはノーマークだったのね。まさか、と思って聞いてみたら、3日通し券なら余りがあると言う。でもきょうは最終日、つまり通し券を買っても65ドルの当日券になってしまうということ。さすがに65ドルは払えないよねえ、なんて横のおばちゃんと話していたのだけれど。
しばらくイジけていたところ、どうしても見たかったButcher Brownのライブが始まったの音漏れで聞こえ始めて、ダメだこれ、迷ってる場合じゃねえや、いい、もう払う!と決意して人垣をかき分けてチケットスタンドに舞い戻り、おれ、3日券、買う!おれ、払う、お前に、65ドル!と宣言したところ、受付のシスタなねえちゃんがおどけながらピューイと小さく口笛を吹き、ちょっと待ってな、と言って席を離れた。
しかして机の下から出てきたのは当日券で、「これはスタッフのだけど、あんたの決断をリスペクトして譲ってあげるわ」マジかよ。そういうこともある、というスモールトークでした。