9月はつむじ風のようにひゅんと過ぎ去っていった。なにしてたかっつうと引っ越しの準備なんですが。とにかく次の物件が決まらなかった。単純に賃料水準が高止まりしてて条件と金額が折り合わなかったのがベースにあり、ニューヨークの賃貸の審査水準がボストンより厳しいのがひとつ、おれがクレジットスコアを持っていない(日本発行のクレジットカードを使い続けているため)のがひとつ、おれに定期収入がないのがひとつ、合わせ技で審査通らず、みたいな。

もちろん物件によっては楽勝通るところもあって、何が違うかというと建物の所有形態らしい。レントビルディングって呼ばれてる、一棟まるまるひとつの会社が持っててぜんぶ賃貸っていう、日本の普通の賃貸マンションみたいな形態がいちばんゆるくて、あとやっぱ規模が大きいとテナントひとつが有するリスクのパーセンテージが低いから、なおさらタワマンみたいのはほとんど楽勝。1年分前払いって言われたとこもあったけど、それだって別に損するわけじゃないし。

そんでややきついのはコンドって呼ばれてる分譲マンションの賃貸。いわゆる分譲賃貸やね。所有区分は部屋ごとに違うけど管理会社が賃貸管理してるっていう。でもいい感じのアパートメントはコンドが多くて、うちが決めたとこもコンドなんだけど、結局保証会社使わされることになった。家賃1ヶ月分。ドブに。でももう退去期限も迫ってたし戦ってる余裕なくて、泣く泣く呑んだ。1年分前払いするって言っても、プラス保証金6ヶ月積むって言ってもダメだった。クレジットスコアがあればまだ交渉できたように思うのだが。

ちなみにブローカーが言うには、タウンハウスみたいな個人所有の小規模賃貸がいちばん審査が厳しくて、大家との面接とか履歴書提示とかざらにあって、それはつまりひと部屋あたりの事故ったときのインパクトがでかいからどうしてもそうならざるをえないんだって。あとブルックリンは少ないらしいけどコープっていう、管理組合が建物の所有主になってるタイプのアパートメントがあって、それはたいてい賃貸に貸し出すこと自体禁止されていたり、貸出可能のケースでも書類とかくそめんどくさいから、まず無理のカテゴリに入れておいていいだろうって。

内見も、一度で決めるはずが決めかねてしまって、2度目でサインするはずが帰宅したらどうしても気になる物件が出てきて、結局1週間に3度もニューヨークに通うことになってしまった。バカまるだし。最初高速バスで通ってたんだけどだんだん疲労が蓄積してしまって、ほんとはアセラっていう新幹線が取れれば速いし疲れないしでいちばんいいんだけど切符が売り切れで、最後の往復は飛行機を使ってしまった。マイル様々。ただunitedなのでニューアーク発着、ブルックリンは遠くてやっぱり疲弊した。

けっきょく3度目の動機となった部屋は気に入らなくて、もう2度目で見た部屋に決めようと話してカフェでオンライン申し込みした直後に、通りかかったマンションが気になって「こういうのがいいんだよなー」なんて言ったらブローカーが飛び込みで聞いてくれて、そしたら内装工事前の募集出してない部屋があるから見る?ってことになり、工事前だからけっこう各部ズタボロだったんだけど全体的にはとても気に入ったので、つまり最後の最後に土壇場の偶然で決めたって話でした。

エリアは、みなさんミーハーすぎて笑い出すウィリアムズバーグです。高いかっつったら高いんだけどもちろんマンハッタンよりは安いし、フリーレントが付いて現状維持くらいのレベルにはおさまった。なんでかっていうとウィリアムズバーグの生命線といえる地下鉄Lトレインが、2019年の2ndクオーターつまり4月か5月から最低15ヶ月、たぶん延びて1年半、工事ですっかり完全に停止するのです。みんなLシャットダウンって呼んでるそれが決まっているので、不動産相場はちょっと弱含みになっているのだった。

生命線が止まってうちもたぶん不便しそうだけど、なんかそれもそれで面白いかなって。そんなこと言ってらんないくらい陸の孤島になりそうだけど、まあ、なんとかなるっしょ。ブルックリンはボストンでは見かけない漕がずとも走る電動自転車がびゅんびゅん飛び交っていて、あれ買ったら楽しいかも。引っ越し業者の話とかまたちょっと書きます。