ブラジリアンハーモニーはMPBつづき、カエターノ。MPBはジャンル名じゃないなーって思える、EDMと同じくらいレンジの広い言葉なのだが、ボサノバ以降、という意味では共通した時代感覚があるのもわかってきた。それにしてもムルホランドはケチなのか自分でトランスクライブしたリードシートをOHPに映すばかりで配布してくんないんだよね。もう一度言うけど、ケチなのかなw。

学校の前でミツと待ち合わせして、バックベイ駅からamtrakでStamford駅、Metro-Northっていう謎の近郊鉄道に乗り換えてPort Chester。ドナルドフェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズのツアー初日を見にきた。いちおうツイートしたの加筆して貼っておきます。

NYから電車で1時間10分という絶妙な片田舎、ポートチェスターにやってきました。駅周辺、東京でいうと拝島って感じ。なんでこんな地味な町のホールが、ドナルドフェイゲンの新バンド、ナイトフライヤーズのツアー初日なのか。たぶんフェイゲンなりの意味がありそうです(もしくは単なる意地悪)。駅の近くにエルサルバドル料理店がふたつあって、入ってみると英語のない世界に。移民の町なのかな。

Donald Fagen & the nightflyersのツアー初日、さきほど終わりました。素晴らしかった。まずメンバーは既発の4人に加えてZach Djanikian (gt, t.sax, cowbel)。このマルチプレイヤーの加入により、楽曲の再現度がかなり高くなってる。しかし再現ライブとはまったく違う。フェイゲンはピアニカ1曲を除いてずっとRhose。Keyのウィル・ブライアンはハモンドの上にProphet08、左側に生ピ音色のエレピ、右側にエレピ。これで音色的にはじゅうぶん。コーラスは3声で入れ替わり制、ごくたまに6人全員歌う瞬間がある。

コナー・ケネディはギターも歌も才気横溢、フェイゲンを食ってしまう瞬間すら。これを見込んだんだな。来日時のお楽しみで伏せますが、アルバム曲のほかに意外な曲もまさかの有名曲も出し惜しみなくやってくれました。そのセットリストを通じて表現されたのは、剥き出しになったフェイゲンの核心。若いバンドサウンドは、楽曲からジャジーな和声、シーケンサー、アーバンなシンセ音などの化粧を剥ぎ取る装置でした。その音像をとおして聞けば、フェイゲンはSDの1st、2ndから一貫して、aja/gaucho期も現在に至るソロも、彼は変わらずブルースロックを書いてきたのが明確にわかる。

それにしても、なんて達者でみずみずしい、相反する性質を高次にあわせもった演奏だったろう。桁外れの楽曲群を携えた新人バンドのデビューを、72年にタイムスリップして目撃しちゃったような気持ち。ジャジーな化粧を取り払った音像はBNJFで不安だけど、それを超えてアメリカ音楽のひとつの極致があるのは保証します。Twitterでは何か言われるのが嫌で書かなかったけど、こんな日記まで読みにきてくれる人はネタバレ激怒とかしないと信用して、セットリストを書いておきます。

Green Flower Street
New Frontier
Hey Nineteen (Steely Dan)
Shakedown Street (Grateful Dead)
The Nightfly
Kid Charlemagne (Steely Dan)
Beast Of Burden (Rolling Stones)
Bad sneakers (Steely Dan)
You Can't Catch Me (Chuck Berry)
Dirty Work (Steely Dan)
Home at Last (Steely Dan)
Falling - Twin Peaks Theme (Julee Cruise)
Third World Man (Steely Dan)
Bodhisattva (Steely Dan)
Weather in My Head
Peg (Steely Dan)
I.G.Y.
Viva Viva Rock and Roll (Chuck Berry)
encore
Reelin' In The Years (Steely Dan)

なんだろうこの満腹感。Fagenは死ぬつもりなのかな。自分の作品群をアメリカ音楽のメインストリームのなかにプロットしていこうとする意図ははっきりと汲み取れた。グランドセントラルまで出てミツと別れ、ブルックリンの36st駅という、フォデラがある駅なんだけどw、そこのホテルに泊まった。マンハッタンはもとよりブルックリンのダウンタウンでもホテル代の高騰は著しく、ここまで郊外に出ないとおれの財布では風呂つきの部屋が取れなかったのだ。