ひさしぶりに早起きして、学校に行くのと同じ荷物のまま、いざニューヨーク。空港行く前にソーシャルセキュリティナンバーの面接済ませたろかと思って1時間早く家を出たのだが、ノースステーションの事務所は大行列で、45分待ったところでこりゃダメだと諦めて空港へ向かった。行きは遅延もなくスムースそのもの。もうニューアークも4度目なのでぼんやりした頭のまま、気付いたらペン駅に降り立っていた。取材で来米している柳樂っちに連絡したらインタビューに同席していいと言うので、その足でウィリアムズバーグのカフェに向かう。

ウィリアムズバーグ、タワマン建ちまくっていて、正直もうダサエリアに片足以上突っ込んでる感じ。さておきカフェで落ち合ったのはバークリーの先輩で、Q-tip、ビラル、タリブ・クウェリのキーボーディストを務めるBIGYUKIであった。マークジュリアナとの共演歴もあるし、ケイシー・ベンジャミンやマーク・コレンバーグらグラスパー方面とも親しくて、タクヤクロダと並ぶ、いまおれがいちばん憧れている存在の日本人である。

ライブ映像を見ればわかるとおりテクニックは日本刀のような切れ味、サウンドもくそかっこいいし、顔も伊勢谷友介みたいだし、ちょっと怖そうだけど聞きたいことは山ほどあった。どうやってアメリカでもいちばんかっこいい音楽を産出してるゾーンにがっちり食い込んでいるのか、バークリーからどういうプロセスでいまに至っているのか、なんでBIGYUKIって名前なのかw。ところが本人、おれと柳樂のあらゆる予想を余裕で500倍くらい上回る、天真爛漫、稀代のおバカキャラだった…。

楽家のパブリックイメージもあるのであんまり書けないけど、カフェでお茶して、場所を移してインタビューして、そのあとバーへ飲みに行って、優に半日を過ごし、もうすっかり好きになってしまった。この人ならどこでも暮らしていけるだろう。ひとつだけエピソードを挙げるとするなら移動中、女の子が散歩させてるチワワを柳樂っちが見えずに蹴っぽってしまって、飼い主が激怒する事件が勃発したんだけど、2秒くらいでそれを取りなして、5秒後には肩に手を回してナンパし始めていた。その頃にはもう、こんくらいアホで並外れた愛嬌がないとアメリカでサバイブしていけないのだとしたら、俺には無理だ…と落ち込み始めてすらいた。

とにかく規格外の大物、BIGYUKIに別れを告げ、予約を入れていたピータールーガーへ。はっきり言って我らふたり、BIGYUKIの巨大なインパクトでステーキの味が霞んでいたと思う。ポーターハウス、前回来たときほどは感動しなかった。それでも真ん中の4切れほどはさすがという完璧なステーキで、ただ前回は全部のピースがその調子だったので、部位が少し前回より落ちたように思った。デビッドカードが使えるようになっていて感動。コーヒーを飲んでる間に黒田卓也さんから柳樂ちにメッセージが入り、日にちが変わった頃に近くのバーで落ち合うこととなった。とんでもなく豪華な晩となったぞ、これ。