午前中に新しいアパートメントの管理事務所に行って鍵をゲット。台車を借りて、いざ引っ越しだ。引っ越しどーすんのって話なんだけど、一晩も過ごしてない前の物件は道を渡ってちょっと行っただけの1ブロック隣だから、自力でやれるはず。はず。はずだ。奥さんと犬は新居で片付け部門ということにして、頬を叩いて気合を入れて、うおりゃーってなもんで台車にダンボールを積み上げられるだけ積み上げる。

家具を買う前でよかった。たった5往復で引っ越しは終わった。たった5往復だがおれのガラスの腰は砕け散る寸前である。早くチャイニーズマッサージを見つけないと取り返しのつかないことになる気がする。あと申し訳ないけどユニオンのレコード用ダンボールはありゃ薄すぎて引っ越しにはダメだ。けっこうな量のレコードを痛めた。なつかしいマンハッタンレコードの箱はすべて無事。まだベッドもないので今日までとっていたホテルに戻り、ホテルが直結したモールにあるバーガー屋で食って寝た。

これぜんぜんバカにしてるとかそういうんじゃないので怒らないでほしいのだけれど、引っ越してからというもの、地方出身者の人ってえらいなー、たいへんだったんだろうなーという気持ちになっている。田舎とはいえ立川で育って、中高にもなれば都心で食事や買い物や街歩きをし始めるようになって、実家を出てからは言うに及ばず、ぜんぜん意識したことなかったけどやっぱもう蓄積がすごいのだった。

駅ビルやヒルズみたいなイージーな集合施設で買い物したりメシを食う人たちを見下していたところがあったと思う。もっと気の利いた、支払うに値する、気分のいい場所と人と過ごし方を東京じゅうにいっぱい知っていて、それ以外はゴミだと思ってた。あれ、だいぶアドバンテージ下駄履かせてもらってたんだなーって思う。

いまこの町のことまじでほんとに何ひとつわからなくて、日々ちょっとずつマップを拡張している最中で、そして目の前にあるこのクソダサい、東京だったら足を踏み入れないだろう集合商業施設は、すぐにメシや欲しいものにありつける、たいへんにありがたい存在なのだった。まあいつまでもこのままじゃつまらないので、早く自分だけのボストンマップを構築しないことには始まらない。雪が深くなる前に歩き倒したい。